金沢星陵大学女子短期大学部

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【信川プレゼミ】地域人材育成の調査報告

2022.03.02

信川プレゼミナールでは、人の役割や活動に着目し、組織や地域社会の活性化について検討しています。今年度は、コロナ禍により企業への訪問調査が困難な状況でしたが、地元の方々にご協力をいただき、プレゼミ生が調査を実施することができました。ご協力いただきました関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

(文:担当教員 信川景子 教授)

<訪問調査活動報告>抜粋

〈テーマ〉DX人材育成の施策に関する考察 -子供に向けた教育の必要性-

経営実務科 1年次 K・Hさん(石川県 金沢市立工業高等学校出身)

1.問題意識
現在、社会はSociety5.0を目指しています。Society5.0とはサイバー空間とフィジカル空間を融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会のことです。Society4.0の社会(情報社会)では、人間が操作して情報を入手・分析しています。そのため、情報をうまく活用できる人とできない人による情報格差が問題となっています。Society5.0では、AIを活用することで人間が直接操作しなくても情報を得ることができます。(略)Society5.0を実現させるためのIT人材が不足しているという課題があり、将来を見据えたDX人材確保に関して、特に子供に向けた取り組みについて研究しました。
 
2.DX人材育成の現状
現在は各所で様々な取り組みが行われており、例えば、IT教育の義務化やシビックテック推進事業、AI導入による学習環境の整備などがあります。具体的な活動事例を国、自治体、企業に分けて概観しました。まず、国の施策ですが、文部科学省はプログラミング教育を必修化しました。プログラミング的思考を育むことを目的としています。プログラミング的思考とは、自分が意図する一連の活動を実現するために、効率的かつ論理的に考える力のことです。(略)
最後に、企業の事例です。プログラミング教育をスムーズに始められるように支援している、石川県の一般社団法人FAPに着目しました。具体的な活動として「ふれて!あそんで!まなべる!プログラミングクラブ。」といった、子供対象のプログラミングスクールを2021年に開講しています。(略)

3.訪問調査
子供のプログラミング教育について検討するため、上記のFAP様へ交渉した結果、ご協力を頂き、現場への訪問調査を実施しました。実際に2つのコースを見学させていただきました。1つ目は、年中から小学2年生が対象のビギナーコースです。活動内容は、紙にシールを貼ってその色を読み取り、オゾボットというロボットを動かすプログラミングです。子供達はオゾボットの電源をつけることやシールをきれいに貼ることが難しいと思っているようでした。そのため、教材を選ぶ時は事前知識の有無だけではなく身体の発達状況も考慮する必要性 を感じました。2つ目は、小学3年生~小学6年生が対象のアドバンスコースです。活動内容はカメラを使用したAIプログラミングです。モーターと連動してパペットを動かすプログラミングでは、パペットに紙コップやモーターを入れるといった工作を行いました。また、ポーズを検出するプログラミングでは、中学で習う座標を使用していました。このように、子供たちはプログラミングを通して様々な能力を身につけていることがわかりました。
 
4.結果考察
訪問調査した結果、技術だけでなくプログラミング的思考の育成が図られていることが示唆されました。(略)このように、子供たちは「原因分析→対策立案→実行」を何度も試行錯誤することで解決策を導いていました。また、解決しても新たな疑問や課題が生まれ、それが繰り返されています。この思考のプロセスが循環することにより、子供たちの思考能力が着実に向上していることが確認できました。
 
5.まとめ
今後は、ITがより身近な存在となります。小学生でもプログラミングができるぐらい敷居が低くなったり、AIを活用した高度な授業へ進んでいきます。また、機械が単純作業を行い、人間はプログラミング的思考を活かしてアイデア作りを中心に行うようになると考えます。そのため、知識や技術に加えて「考える力」を身につける必要があります。したがって、国や自治体、企業が共同し、子供のプログラミング教育を充実させることは、将来のDX人材確保に向けて重要な取り組みであると言えます。

訪問調査を通して

今回、調査した現場では、単に知識を身につけるのではなく、テクノロジーに触れる楽しさを伝えることが第一に考えられており、相手を思いやることの大切さも実感しました。DX人材は現在進行中の課題であり様々な試みが行われています。このような現状の課題を研究することで新たな気付きが多く、自分自身の将来を考えるきっかけにもなりました。今後も理解を深めて、自分なりの最適案を導きたいです。ご協力をいただいたFAP様には、貴重な体験をさせていただき感謝しております。ありがとうございました。(K・Hさん)