INTERVIEW

様々なボーダーを取っ払い
正解も終わりもない
世界の問いに向き合う

人文学部長 田中 富士美教授

国際文化学科長 前田 昌寛准教授

Talk 1

コロナ禍を経た今の人文学部の様子は?

田中

グローバルコモンズが賑やかになりましたね。マスクを外した学生の表情が新鮮で、皆生き生きしていて。現4年次生はコロナ禍で現地留学に行けず不完全燃焼の学生も多かったのですが、就職活動で健闘しています。心の中で灯していた小さな炎を今まさにボワッと燃やしている、そんな感じです。

留学制度が元に戻ったこともやはり大きいですね。留学のためにしっかり準備しようと頑張る1年次の姿が頼もしいです。また、教員を目指す学生の教育実習を見に行く機会も再開されました。自分なりに授業を組み上げて、生徒の前に立つ。授業後は生徒から花束を受け取り、泣きながら喜ぶ学生を見てこちらも感動します

前田
田中

「コロナ禍」だったとはいえ、人文学部の精神は変わっていません。いかなる状況下でもへこたれない、やり通す姿勢、適応力。むしろコロナ禍でその力が際立ったようにも思います。

Talk 2

現在の世界情勢・社会情勢が学びに与える影響は?

田中

先日ハンガリーの大学に出張に行ったのですが、8,000マイルも離れているのに抱えている課題はどこの国も同じで。理系重視・ロボティクスの発達・情報過多…。とりわけChatGPTについてのテーマは大きな課題ですよね。

情報が「正しいか正しくないのか」を見極めることはもちろん、どう向き合うかをしっかり議論する必要があると思います。例えば授業の課題に対し、最初にChatGPTで答えを出して、それに対して自分で批判的に突っ込みを入れていく。そういう“鵜呑みにしない姿勢”が大切だなと。

前田
田中

正しさは相手とのコミュニケーションの中で見極めていくことも沢山あります。ChatGPTはいかにも正しいと思われる情報も生成してくるため、「見極める力」というのは本当に大事ですね。そもそもChatGPTのデータベースを入力しているのは人間ですし…

英語の翻訳もAIに任せていいのでは、という意見もあります。でもせっかく極める環境があるのなら、自分でやってみたくないですか、と。車の運転ができれば自分で好きなところに行くことができるように、英語を駆使できれば今よりもっと多くの人と交流ができるようになる。それってワクワクしませんか、と学生にはそう伝えています。

前田
田中

機械翻訳を研究している先生の分析では、ある一定の基準を超えると人間の生の英語力が無いと通用しない場面が生じてくるそうです。肝は人間にある、ということを私も学生に伝えたいと思います。

人文学部の学びには正解と終わりがありません。200近い国があり75億人が暮らす世界で、AIが答えを一つに絞れるわけがありません。これからの学びでこのことを意識する必要があるのではないでしょうか。

前田

Talk 3

人文学部での学びとそこから得られるものは?

教職科目の英語科教育法では、データサイエンスを重視した教育に力を入れています。人間の感情の側面と、科学的なデータから見る側面。その両方からアクセスし、それらの間にある差にはどういった要因が考えられるかを学生と一緒に考えています。

前田
田中

私の専門の英語学では主にゼミで複数言語を操る人の頭の中の仕組み、またそうした人のカルチャーをマインドマップのように図式化しています。世界には複数言語を話す人のほうが多いことを日本人はあまり知らないかもしれません。そしてその人たちと自分たちとは何が違うんだろう、という問いに向き合います。

そうした事実を知るのは、外に出てこそでもありますよね。考える前に、思い悩む前に、まずは海外に一歩踏み出してみるのは大事ですし、海外に出て得られる発見や気付きは自分のこれまでの「あたりまえ」を簡単に超えてきます

前田
田中

そういえば人文学部の1期生は本当にアクティブで、世界との距離が驚くほど近くなっていました。ちょっとしたお出かけという感覚で「週末エジプト行ってきます~」とか、1週間でヨーロッパを5か国周ったり、で帰ってきたと思ったらすぐにシンガポールや韓国に行ったり。

Talk 4

人文学部での学びに興味のある人へ

自分が何を学びたいのか?」「将来何になりたいのか?それを考えるけれど見つからないのが高校生だと思います。だから焦らなくても大丈夫。少しでも迷っていたら、できるだけ広い世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。いろんな人やものと出逢い、自分を見つめ直すきっかけになります。やりたいことは、入学してから見つかるものです

前田
田中

英語に興味があるけれど自信がない。そう思っている人も多いのではないでしょうか。世界にはいろんな英語があって、それぞれの癖や特徴があり、そこに正解はありません。ネイティブのような発音をする必要は無いし、流暢でなくても大丈夫。大事なのは「コミュニケーションのツール」として使いたいかどうかです

現在の4年次生でウクライナの実態を知るためにポーランドまで行きボランティアをした学生がいます。現地に赴き自分は何もできないという無力感を感じていたところ、「あなたが来てくれたことで私は救われたわ」と現地の少女から言われ、その学生は自分の存在意義を感じたそうです。遠い世界に思えることでも「同世代の子が同じ世界で苦しんでいる」ことを目の当たりにして、自己を見出すこともできるんです。

前田
田中

私の過去のゼミ生も同じような経験をしていました。留学を経験して、「自分が必要とされていること」「日々自分のできることが増えていくこと」を実感し、自己肯定感を上げて帰国した学生がいます。そこから自己ととことん向き合い、“キャリア教育”という分野に自分の軸を見出し、現在は国立大学の博士課程で研究を続けています。

Talk 5

人文学部の魅力と今後の展望は?

ずばり「やりたいことを見つけに来る学部」です。“海外”“英語”“文化”など同じ興味関心を持ちながらも多様な考え方を学び合える仲間が集っています。教員との距離感がとても近いのでどんなことでも気軽に相談してくださいね。

前田
田中

人文学部を開設してから今日まで、本当に面白い学生が集まっているなと。これからの社会情勢や国際情勢などに柔軟に対応し、タイムリーなカリキュラムを構築しながら皆さんに必要な学びを提供します。