金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

「朝の散歩道」

6月11日

30年来の日課があります。毎朝6時からの散歩です。昔飼っていた柴犬の雑種が計ったように6時少し前になると短く鳴いて催促し、散歩癖をつけられてしまったのが発端です。どちらが主人なのかよくわからなかったのですが、リードを手に迎えに行くと大はしゃぎでまとわりつき、嬉しさを全身で表現する命の愛しさは格別でした。折に触れて「おまえはいいなあ。明日は今日より立派な犬になろうなんて、これっぽちも考えないものなあ!」と話しかけましたが、ただしっぽを振るだけ。13歳で死にました。子どもが家を離れ、老夫婦の行く末を考えて、以後新たな動物を飼うことはあきらめました。
 
今は一人でもりの里から浅野川沿いの桜並木の遊歩道を朝霧台公園まで往復します。約5Km、時計は持たないのですが、ちょうど1時間。台風でも来ない限り、雨の日も雪の日も。耳にはイヤホンでNHKのラジオ基礎英語ⅠⅡⅢと英語会話。聞き続けているとは言うものの、15分毎のテーマ音楽で時間と現在地がわかるからで、中学生ほどにも語学力の進歩・上達はありません。歩きながら軽い体操を行い、4本指が縦に入る位に口を大きく開けて演劇部員のように「五十音」を(小声で)発声。時に通行者に怪訝な顔を向けられることも。「近代体育の父と称されるドイツ人グーツムーツ(1759-1839)が最初に考えた体育の内容には、歩走はもちろんのこと、発声運動や感覚を訓練する運動も含まれていたから、これはれっきとした体育なのです。発狂人ではありませんぞ」と心の内で釈明しながら。
 
遊歩道沿いの左岸・右岸の土手は、4月初めに桜並木が満開、5月初めにはつつじ、小判草、6月になると金糸梅(ヒドコート)が咲き乱れ、今は梅雨の訪れとともにあじさいに変わろうとしています。今朝の新聞「時鐘」欄に、あじさいに「密ではありませんか」と語りかける洒脱な一文があって、思わず「座布団一枚!」と笑いました。人工的なソーシャルディスタンスから自然の姿のナチュラルディスタンスへ早く戻りたいものです。これまで「夏休みなど学生のいないキャンパスは本来の大学らしい」などとうそぶいておりましたが、ここまで続くとやはりアンナチュラル。
 
あじさい(紫陽花)の青紫の密がひときわ美しく見えます。健康な日常の回復までもうひと辛抱でしょう。