金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

「推薦書」

6月15日

6月第2週に入って、新型コロナの影響で遅れがちであった就職活動が最盛期を迎えているようです。短大キャリアデザイン館にはリクルートスーツの女子学生たちが緊張した面持ちで出入りする姿が見られます。コロナ感染防止のため、できる限り滞在時間を短くするよう要請されていますので、真剣さもひとしおでしょう。
 
進路支援課から何通かの推薦書を書いてほしいと要請があって、学生の関係書類に目を通し、そのあとで一人ずつ対面・ウェブで面談を行いました。なにせ学生の生涯にかかわる大事な書類ですから、責任重大。慎重に作成し、担当者から渡してもらいました。
 
まもなく、進路支援課から「ひとりの学生から、推薦書の課外活動の入賞記録が4位となっていますが、実は5位ですと申し訳なさそうに訂正の申し入れがありました」との連絡。「その誠実な正直さこそ大切」とのメッセージを添えて直ちに書き直しました。
 
「誠実」というのは「私利私欲をまじえず、真心をもって人や物事に対すること」。誠実な人間というのは、つまり自分に得だからと言ってうそなどついたりしない人のことです。この女子学生は自分にとってたいへん大事な場面で、自分には全く責任のない私の間違いが、あるいは結果的に自分に有利な方向に作用するかもしれないという打算を超えて、あえて「誠実」であることを選び、行動に移したことになります。「誠実にして社会に役立つ人間であれ」とする本学の建学理念がこのような形で学生たちの精神にビルトインされ、しかも実践されるまでに血肉化されている。
 
もちろんこのような学生ばかりではないかもしれません。ですが、少数であっても、このような学生の存在は友達間に、さらにはより大きな集団に感化(インフルエンス)を与えずにはおきません。新型コロナの感染は困りものですが、こちらの感化には畏敬の念が伴います。1枚の小さな推薦書の出来事でしたが、学長として静かな誇りと感動を覚えたことでした。