金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

「9月卒業」

10月5日

9月24日、秋の短大学位記伝達式を行いました。卒業生はお一人でしたが、式は式。私も礼服・白手袋に身を包み、学位記をお渡しすることができました。ゼミの先生からも心温まる激励の言葉があり、学生さんも2年半の学生生活を振り返って、楽しかったこと、辛かったことなど、静かに語り合う良いひと時を持つことができました。

私が卒業に際して贈るお祝いの言葉は、だいたいいつも同様で、次の3つから成ります。
第一は、卒業というのは英語でcommencement、コメンスメント。出発という意味を持ちます。

そうなのです。星短を卒業するということは、これから社会で誠実に生きていくということへの新たな出発なのです。船出というほうがいいかもしれません。港を出て大海原を北極に向かうのか、東へアメリカを目指すのか、西へインド方面に向かうのか、人さまざまです。

筆者撮影、彼岸花の咲く頃(浅野川にて)

大事なことは、自分の中に、方位を示す羅針盤ないし北極星を持つことです。星短では「誠実にして社会に役立つ」という言い方で、「誠実」をその星に掲げています。しかし世に棲む上では、その星一直線に生きていくのはなかなか困難です。心ならずも「誠実」に対して目をつむり、進路を転じなくてはならないこともあるかもしれません。その時は悩みますね。それに対して、私はあえて申し上げます。「海に嵐があるように、目の前に危険が待ち受けている。その時には先ず避けなさい。逃げなさい!」。命あって、心の中に「誠実」という北極星があれば、また本来の進路に戻れるのですから。ドゥルーズというフランスの哲学者の知恵の借りものなのですが…。

第二に、9月卒業ということで、同期に入学した友人たちより、少し時間がかかったかもしれないということです。いろいろな事情があったと思います。悔しい思い、せつない思いもなさったかもしれません。でもそれはあなたの人生に優しさと深みを与えてくれます。生き急ぐ必要はありません。眼は見る、耳は聴くという固有の目的ないし役割があります。古代ギリシャではそのことをアレテーと呼んでいました。では人間のアレテーは何か、それは「幸福になること」だと彼らは考えたのです。私もそう思います。ゆったりと幸福になってください。あなたの人生なのですから。

第三に、星短は、あなたの母校だということです。あなたが何をしても、将来どうなっていようとも、いつでも帰ってくることのできる母校なのです。折に触れて帰っていらっしゃい。いつでも歓迎いたします。
これからの大いなる航海を寿ぎ、良き船出となりますよう祈ります。
ご卒業おめでとうございます。