金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

「カレッジで身につけるカレッジ」

11月15日

多数派と少数派をめぐる集団心理の有名な実験があります。一つの教室に、お互い初対面だと知らされた30人の人たちがいます。普通であれば、ほとんどの人が「青」と答える青緑色のカラースライドの色を順次答えさせる実験です。ところが30人中20人はサクラ(やらせ)で、最初の人から次々と「緑」と答えさせるのです。すると15番目くらいにいた被検者(あなたのこと)は、「青」だと思った自分の意見を正直に答えられずに、周りに合わせて「緑」と言ってしまうというのです。集団同調心理といってもよいかもしれません。自分だけが一人違う意見を言うと、周りから浮いて目立ちますものね。よく気持ちがわかります。
 
でも面白いことに、10番目くらいの人(これもサクラ)が「青」というと、15番目の被検者であるあなたはほっとして、自分だけじゃないのだと思って、正直に「青」と答えることができるという実験です。もちろん答えは「青」が正しいのです。
 
これは、世の中にあって、周りに流されずに、少数意見であってもきちんと主張することの大切さを教えているものです。通常私たちは、自分で自由にものを考えているつもりでいるのですが、メディアが発達した現在、案外それはテレビのニュースとか、新聞とか、著名人の受け売りであったりすることはないでしょうか。
 
前に、福沢諭吉のお話をしました。福沢は、他人に自分の頭を支配されることなく、自ら独立した精神でものを考え、発言し、行動できる人間になるために、学問をするのだと言っています。だから、たとえ偉い高名な教授の授業であったとしても、まずはその講義を理解し、次に別な考え方ができないか、当てはまらない例はないかなど、批判的に受け止めることから始め、最終的には自分のオリジナルな見解や主張を展開しなければなりません。大学の評価(S・A・B・C)は、それがどの程度できているかという評価でなければなりません。
 
私は高等教育、すなわち短大も含めたカレッジでは、あるいはカレッジを卒業しましたというならば、少数意見であることを恐れずに語れる知性と、自分を主張できる勇気を持つことがその証になると考えています。カレッジ(college)で身につけるカレッジ(courage)=勇気ですね。