金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

「Sei-Tanの秋」

9月5日

9月。毎年のことですが、「秋来ぬと⽬にはさやかに⾒えねども⾵の⾳にぞおどろかれぬる」(藤原敏⾏)。この年齢になると、あと幾たびこうして秋を迎えられるのだろうと、若い時とは違った感慨が深まる(ような気がする)のもまた一興です。
 
全国で新型コロナの感染拡大はまだまだ終息の兆しが見えません。しかし、Sei-Tanは予定通り、後期授業開始の見込みです。短大の時間は短いのです。細心の注意を払いながら、対面と遠隔授業等を賢く活用しつつ、乗り切っていこうと考えています。1年生の皆さんには、後期に、全員に1台ずつタブレット端末を無償貸与します。どうかさまざまに有効活用してください。遠隔授業のためだけではありません。将来Sei-Tan「経営実務科」を卒業し、ビジネス界で輝く女性になろうと思ったら、パソコンもタブレットも使いこなせる能力は不可欠な教育内容だと思うからです。来年度には全Sei-Tan生に行きわたり、新たなIT教育を開始します。(現2年生の皆さんにはごめんなさい)
 

筆者撮影、秋風の音

ところで、先生方から、Sei-Tanの皆さんには「経営実務科」に相応しい実践的英語会話力も身についていると伺いました。うれしい限りです。短大の先生方、職員の方々のご尽力もあって、English CaféやEnglish only Zone、はては海外の大学生たちとのオンライン交流など、外国語を学べる環境も随分整っているように見えます。これももっともっと活用してください。なかには中国語や韓国語にもトライしている方もいるのだとか。多言語化も大いに結構ですね。
 
恥ずかしながら、私は英語を学んで60年にもなるのに、英会話が苦手です。たまに海外の国際学会に出かけると、もう毎度四苦八苦。冷や汗たらたら。日本の空港に帰り立つと「もう英語を使わなくてもいい」と心の底から安堵します。私にとっては、外国語を学ぶ目的は、読んで理解すること、様々な世界を知るということが主でした。漢文学習と同じです。秋から、皆さんのEnglish Caféにお邪魔して、一緒に勉強できたらなとひそかに考えています。
 
私は昔、第二外国語にドイツ語を選びました。その時思ったのは、世界は英語だけではないのだという新鮮な感動でした。また英語だと二人称がYouだけなのが、ドイツ語では敬称Sie(ジー、あなた) と親称Du(ドゥ、君・おまえ)があって、普通は敬称Sie(ジー)を用い、親子・兄弟・家族、友人同士、祈る者は神に対して親称Du(ドゥ)を使うのだと教えられて、「親子・友人は分かるにしても、神様をお前呼ばわりするなんて!」とびっくりもしました。ともかく、いつの間にかドイツ語は私の夢の国、憧れの国のことばになりました。ある時、モノクロのドイツ語版映画(だったと思います)が、Sie(ジー)と呼び合う男女がやがて恋人に変わる時、女性が「Du(ドゥ)と呼んで!」とささやくシーンがありました。ドイツ語ってなんてロマンティックなんだろう!映画の題名もストーリーも忘れてしまいましたが、その場面だけは印象に残っています。今ではドイツでも、大学生たちは初めからDu(ドゥ)を使うとか聞いたことがありますが、実際どうなのかな。
 
Sei-Tanの秋には、2021流星祭(11月開催予定)もあります。金沢星稜大学との合同イベントですが、Sei-Tan生だけが出場できる恒例の人気イベント、本物のブライダル・ファッションショーのステージもあります。それらのSei-Tan花嫁さんたちを見ていると、ルイ・アラゴン(学長室の窓から「教えるとは希望を語ること。 学ぶとは誠実を胸に刻むこと」(2020年4月15日)参照)の詩「エルザ・ワルツ」の一節を思い出します。
 
「それから人生は そのガラスのかかとで ぐるっとまわった」
 
将来、親・兄弟姉妹・家族、友人など、たくさんのDu(ドゥ)と呼べる人たちが集まり、自分の最愛のDu(ドゥ)と呼べる人を得たことを、人々と神に感謝し、披露する晴れの日を思い浮かべ、どうぞ華やかで美しいワルツを軽やかに踊ってみてください。
 
9月1日からは2022年度入試「総合型選抜<自己㏚方式>」(意欲重視型) のエントリー受付も始まります。
さあSei-Tanの秋です。
 
 
出典/
ルイ・アラゴン『ポエトロア』第3輯 1953、大島博光訳「エルザへのほめうた エルザ・ワルツ」、大島博光記念館WEBサイトより