金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

「メフテルでトルコ地震支援の輪を!」

2月15日

2023年2月6日未明、トルコ南部からシリアにかけて発生したマグニチュード7.8の地震からちょうど1週間。厳寒の被災現場では、がれきに埋もれた行方不明者らの捜索が続き、地震から155時間後の救出劇もありましたが、亡くなった人数は両国で3万4千人超、生存者の発見は絶望的になりつつあると報じられています(2023.2.13 KYODO)。しかも内戦で疲弊しきったシリア国内の状況は不明な点も多く、国際的な支援の手も十分には届いていない(師岡カリーマ「憐れみたまえ」、北陸中日新聞2023.2.12)というのですから、2011年東日本大震災をはるかに超える大惨事になるものと暗澹とさせられます。

トルコと日本の厚い友情には長い歴史があります。1890(明治23)年、当時のオスマントルコ帝国は親善使節団を軍艦エルトゥールル号で日本に派遣。帰路、和歌山県紀伊大島(現在串本町)沖で台風に遭遇して沈没。500人以上が死亡、生存者69名という惨事に見舞われます。この遭難に際し、村人たちが嵐のなかで懸命な救助活動を行い、日本全国からも多くの義援金やお見舞いが寄せられました。そして日本海軍は軍艦で生存者をイスタンブールまで送り届けたのです。トルコの人々はこれに感激し、親日の礎となったと言われます。2015年、日本とトルコの友好125周年を記念し、合作映画「海難1890」が制作・公開されましたので、ご覧になった方もあるかもしれません。(エルトゥールル号については和歌山県串本観光協会(南紀串本観光ガイド)

筆者撮影 微かに春の気配(卯辰山)

また1985年、イラン・イラク戦争時に、日本からは救難機が派遣できず、日本人がイランに取り残されそうになった時、トルコは日本のために自国の航空機を派遣、日本人216人を安全に退避させてくれました。最近では、2011年の東日本大震災時にも、30名余りからなる緊急援助隊を東北にいち早く派遣するなど、手厚い支援を受けたことも記憶に新しいところです。

さあ今度は日本からお返しをする番です。世界中から支援に駆けつけているとのことですが、もちろん日本からの緊急援助隊も既に現地で活動中です。困難な任務ではありましょうが、どうぞ安全に気を付けてご活躍くださいますように。私たちは日本にあって、トルコの人々が元気づけられることを祈りつつ、メフテルの音楽を口ずさみながら、We are with you! と支援の祈りと活動の輪を広げたいと思います。学生の皆さん、できる範囲で、積極的な支援活動に取り組んでくださいますように。

メフテル(トルコ語ではMehter)の音楽とは、伝統的なトルコ軍楽のことです。「ズルナ」というチャルメラのようなけたたましくも哀愁を帯びたラッパの音色と、「ダウル」という中央アジア由来の太鼓、山伏の錫杖に似た「チェヴギャーン」によるテンポの速いリズムが特徴で、トルコ軍の士気向上や威嚇、あるいは儀式に用いたそうです。一度聴いたら耳に残る、勇壮でありながら水に漂うような何やら物悲しい懐かしさを覚える音楽です。(メフテル『ウィキペディア(Wikipedia)』