金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

入学式 式辞

4月2日

本学キャンパスのある御所町の桜も、まさに満開。みごとに咲き誇り、本日、金沢星稜大学女子短期大学部に入学された皆さんを祝うかのようです。本日ここに、教職員とともに、皆さんの入学式を執り行うことができますことを、心より喜びたいと思います。これまでの皆さんのご努力に敬意を表しますとともに、皆さんを支えてこられましたご家族や関係者のみなさまにお祝いを申し上げます。
 
さて、皆様ご承知の通り、世界は大きな危機と変動の時期を迎えております。新型コロナウイルス感染者は、先月には、世界で30万人を超え、1万人を超える方々が亡くなられています。日本国内の状況も決して予断を許しません。そのような中で、感染予防に最大限の注意を払いながら、皆さんの入学式を執り行い、晴れの門出を言祝ぎたいという我々の思いがこの稲置講堂での入学式になりました。来賓や保護者の方々のご臨席はかないませんが、皆さんの新たな生活や学びのスタートが、ご家族はもちろんのこと、社会から見守られ、支えられ、期待され、また祈られているのだということに想いをいたしていただきたいと思います。
それにしても、新型コロナウイルスの流行は、世界の経済や人々の交流に大きな影響を及ぼしています。ついこの間まで信じられていた「地球は一つ」、「グローバルな世界」という姿は、あっという間に国境や人々の往来を閉ざし、一時的であるにせよ、鎖国状態に戻ってしまったようにさえ見えます。世界の歴史は、国家や地域が統一や統合に向かう求心力が働く時代と、分離・独立、多様性が尊重される遠心力が強く作用する時代が螺旋状に交互に現れると申しますが、イギリスのEU離脱、アメリカの孤立主義、そしてコロナ対策にみられる自国主義は、遠心力が世界を支配する時代に入ったことを告げるものかもしれません。これは誠に憂慮すべき事態です。なぜなら資源の乏しい日本が、将来にわたって生きていくには、世界との協調が不可欠だからです。 また、2050年、今から30年後、つまり皆さんがおよそ50歳、皆さんの子ども世代が大学の入学式を迎えるころ、日本の人口は9千万人に減少しているそうです。つまり、昭和10年代の水準に逆戻りするということです。GDP(国内総生産)も減少し、日本が相対的に貧しくなることは言うまでもありません。 そのような、明るいだけではない、むしろ困難な時代を迎えるからこそ、私は皆さんを信頼し、期待を託したいと思います。日本が持つ最大の資源ないし財産は人間です。 嘘をつかず、誠実で、勤勉、威張らず、相手をリスペクトできる日本人の姿は、アフガニスタンで長年人道支援活動に携わり、2019年12月4日、銃撃で亡くなられた日本人医師、中村哲さんを思い浮かべることができるでしょう。また2011年、東日本大震災の大災害に遭遇しながらも、助け合い、譲り合いながら、懸命に立ち上がろうとする東北の人々の姿は、世界中に驚きと感動を巻き起こしました。そうした人間の存在こそ、日本の文化と教育の最大の成果だと思います。一人ひとりの人間を大事にし、育てることこそが日本の生きる道だと思います。
 
では、本学では皆さんにどのような教育を施そうとするのでしょうか。一言でいえば「誠実にして社会に役立つ人間の育成」です。
 
「誠実」というのは、自分の夢や理想に向かい、それを実現するために、日々、目の前のことがらを一つ一つきちんと、手を抜かずにこなし続ける力を持った粘り強い人のことを言います。 皆さんの中には、昨年甲子園で活躍した星稜高校ナイン、奥川恭伸投手(東京ヤクルトスワローズ)や山瀬慎之助捕手(読売ジャイアンツ)たちと同学年の方が多いことと思います。私も夢中になって応援しました。準優勝という輝かしい成果は、監督・コーチといった先生方の指導のたまものではありますが、何よりも「日本一になるんだ」という選手一人ひとりの強い思いがあって、「誠実に」努力した結果でありましょう。そして「準」という少しばかり涙味の混じった歓びは、彼らをいっそう謙虚に未来の夢にかきたててくれるのではないでしょうか。 皆さん、あなたの夢は何でしょう。「星短」は創立40年余り、これまで7千名を超える卒業生が、夢をかなえ、社会で輝く女性となって活躍しています。あなたもその夢をかなえ、輝く女性になりましょう。そのためには、まず「2年で4年を超えるんだ」と、一人ひとりが強い思いを持つことです。 そして「社会に役立つ人間」というのは、あなた方が自分の夢を実現するとともに、それが自分のためだけではなく、誰かが喜んでくれたり、幸せになったり、社会が少しでも良くなるような活動や行為に結び付けなさい、ということです。折に触れて、建学の精神を思い起こしてください。 「2年で4年を超える」星短のカレッジライフは、当然、密度の濃い時間を過ごすことになります。日々のことがらを一つ一つ、きちんと手を抜かずにこなし続けるには、楽しいことも、辛いこともあるかもしれません。でも一人ではありません。生涯にわたって付き合える友もできることでしょう。 また星短が大学や大学院と同じキャンパスにあるという強みもぜひ生かしてください。図書館や総合情報センター、キャリアセンター、スポーツ施設、講義室、クラブ、サークル活動、大学行事なども共有することができます。先生方も学生も、経済、人間、人文といった様々な専門分野を持ち、さらに、留学生、そして皆さん、とバラエティに富んでいます。若い時に多様な考え方や人間に触れることは一生の宝物になります。
 
結びに、皆さんが、金沢御所町の自然豊かなキャンパス環境で、多様な文化や考え方をもつ仲間と交流し、充実した教育プログラムと先生方の指導のもと、夢をかなえる様々な力を身につけ、社会に役立つ人材となることを祈念して、私の式辞といたします。 ご入学誠におめでとうございます。星短にようこそ。
 
令和2年4月2日
金沢星稜大学女子短期大学部 学長 大久保英哲