金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

フィットネス

5月15日

数年前にSei-Tanを卒業し、ある企業に就職した卒業生が、「会社紹介」の顔としてパンフレットの表紙を飾り、PR動画でも紹介されていると先生方の話題に上り、私も視聴しました。さわやかな笑顔と仕事への情熱や取り組み方も自信にあふれ、積極的で、社内はもちろん顧客の皆さんから絶大な信頼を集めている様子が印象的でした。

このように、それまでなじみのなかった新しい環境に飛び込み、その環境に上手に溶け込みながら、生きていくことを「適応」(フィットネス)と言います。その度合いが「適応力」です。
このフィットネス、実は誤解されがちな言葉でもあります。
「フィットネス・クラブ」とか「フィットネス・ジム」。ランニングマシンや筋トレ用具、プールなどがあって、体を動かすことで健康や体調を整える施設や場所のことですね。ジムというのはそもそもgymnasium(体育館)の短縮形です。さて問題はフィットネスです。Fitnessを調べると、もともとは「適応すること」という意味であると出てきます。さてどういうことでしょう。分かりやすく例をあげましょう。
2010年、日本人2人目の女性宇宙飛行士山崎直子さん(当時40歳)は、スペースシャトルで飛び立ち、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在して様々なミッションをこなしました。JAXAホームページによると、打ち上げや大気圏突入時には重力の3~4倍の力が体を押し付け、通常の人間が立った状態では失神してしまう程なのだとか。一方で宇宙では無重力。ですから、身体頑強、いわゆる体力がないと宇宙飛行士にはなれないことが分かります。しかし体力以上に求められる資質があることも容易に想像できます。宇宙飛行には事故の可能性は常にあり、無事生きて家族の元に帰れる保証すらありません。狭い宇宙船の中で、数名の搭乗員が長時間生活を共にしながら、各種の実験や与えられた任務を遂行します。想像を絶する大きなストレスでしょう。

筆者撮影 田上桜の道公園

こうした新しい環境や状況に適応して生きていくには、筋力・持久力などの行動体力のみならず、内臓の健康や、体温調節機能といった防衛体力、さらには意思、判断力、メンタルストレスに対する抵抗力など精神的な要素も大きく関わります。フィットネスというのはこうした新しい環境や境遇に適応する包括的な能力全体のことを言います。Physical fitnessを「体力」と訳してしまったために、飛んだり跳ねたり走ったりする「運動能力」を思い浮かべがちですが、本当は抵抗力や精神面を含んだ「新たな環境への適応」する力がフィットネスです。

冒頭に掲げたSei-Tanの卒業生はその意味でフィットネスに優れていたことが分かります。新入生の皆さん、Sei-Tanで新しい友だちを作ることも「体力」(フィットネス・適応)のうちですよ。