金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

「人生のカレンダーとライフ・ステージ」

7月25日

文部科学省の体力・運動能力調査によると、体力は一般に男女ともに6歳から向上し、男子は17歳頃、女子では14歳頃にピークに達した後、20歳以降から緩やかに低下するそうです(2015年)。人生100年時代というのに、20歳を過ぎると早くも下り坂とは、なんと残酷なのだと思わずにはいられません。教育・体育の世界では、よく「発育・発達」といいますが、一生を通して見ると、「衰退・退化」のほうが遥かに長い。このツールで「生涯」(ライフ・ステージ)を描くのはちょっと辛いと思います。
 
そんな時に出会ったのが、作者不詳『結婚十五の歓び』(新倉俊一訳、岩波文庫、1979)。作者はフランス人、中世(15世紀)の修道士といわれ、よくわかっていません。内容は、結婚にあこがれた男が、実際は無残な結婚生活の15の苦しみに直面するというものです。それがどうして「歓び」なのかというと、「悩み苦しむ者ほど神に近い」という「笑点」回答者もたじろぐエスプリが効いているのです。
 
私がこの本に注目したのは、それらの内容ではなく、生まれてから神に召されるまでの一生を6歳区分して、12か月のカレンダーに置き換えるアイデアです。つまり誕生から6歳までが1月。2月は7歳から12歳まで。以下3月・18歳、4月・24歳、5月・30歳、6月・36歳、7月・42歳、8月・48歳、9月・54歳、10月・60歳、11月・66歳、12月・72歳までと、人の一生を俯瞰します。これでライフ・ステージがずっとイメージしやすくなります。
 
各月にはそれぞれの季節の花が咲き、それぞれ特徴的な行事があります。「発達とか衰退」とは無縁です。誰でも自分の生れ月には特別な親しみを持つように、どれが好きかはそれぞれの好み。現在70歳の私は、このカレンダーでは12月20日に相当します。もう間もなくクリスマス、年末! 1年の終わり? そうではありません。これは中世の話ですから旧暦。思い出深い月を「閏(うるう)月」として加える方法がひらめき、私は結婚や子どもの誕生、就職など公私に忙しかった6月(31~36歳)を、勝手に「閏6月」として付け加えました。これで私は今11月20日にいることになります。そんな勝手なというかもしれませんが、もともと暦というのは人間が勝手に作るもの。だから時の権力者は暦を支配したがります。あるいは長寿時代の現代には、6歳より7歳区分のほうが適合するかもしれませんが、なんだかお手軽な消費税率アップのようで、私は原作者に敬意を表して6歳区分のまま、「閏月」方式です。
 
さて、「生涯スポーツ」という言葉があります。これは本来各ライフ・ステージを舞台に、それぞれに相応しいスポーツを行って、人生を豊かにしようとすることです。一つのスポーツを継続することであってもよいのですが、そうでなくてもよいのです。その際大事なことは「最強のスポーツ」ではなく、「最適なスポーツ」を考えることです。もちろん、3~4月(中・高校生、短大生・大学生)は人生の中で最強の身体能力段階を迎え、最強のスポーツに取り組み、その喜びを味わうことができる時期です。だから、それに取り組むことが最適でもあります。ですが、その時期に仮に全国大会で優勝しようと、それで燃え尽きて(バーンアウト)、スポーツから離れてしまったというのでは、生涯スポーツの観点からは、必ずしも成功とは言えないのです。スポーツだけではなく、勉強や仕事、生きること自体を、私はそんな風に長期的な視野で見たり、考えたりしています。人間は生涯を幸せに生きていかねばなりません。
 
これから人生暦の4月を迎え、短大あるいは大学で勉強してみたいと考えている受験生の皆さん。短大の2年間というのは6歳区分でいえば、ひと月の三分の一。つまり10日間です。この時間を、Sei-Tanで一緒に学んでみませんか?あなたの人生に対する考え方が変わるかもしれません。