金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

「学長とのトークタイム2020」

11月5日

10月から、学生支援課にお願いをして、Sei-Tan生と「学長とのトークタイム2020」という機会を設けました。今のところ不定期ですが、昼休みの30分程、折に触れて数名ずつお話をすることにいたしました。就職や進路のこと、短大の学びについて、楽しかったこと、辛かったことなど様々です。
 
先日私のほうから聞いてみたいことがありました。10月の教授会で、多くのSei-Tan2年次生が、金沢星稜大学後期の授業を科目等履修に出かけていることを知りました。17名、16科目、ひとりで複数科目受ける場合もありますので、合計36コマに及びます。2年次生はもう卒業も間近。就職先もほぼ決まっている段階です。まさか、単位が足りない?!
 
たまたま履修中の学生さんが複数おられましたのでお聞きしました。「短大では実務的な授業が多かったし、就職にも役立って、それはそれでよかったと思います。でも就活が終わった学生生活最後の2年次後期、実務的ではない大学の授業を受けてみたいと思いました」。なるほど、経営学・会社法・広告論、生産管理など経営実務科の高度科目群のほか、心理学、宗教学、英米文学、自然科学、法律概論など幅広い教養・専門科目を受講している理由がよくわかりました。そして、感動しました。
 
人は生きていくうえで生業としての職業をもちます。「職業」というのはドイツ語でBeruf(ベルーフ)、英語でCalling(コーリング)、元来は神から命じられた仕事、つまり天職という意味合いを持っています。神に対して誠実に生きていければそれに越したことはないのですが、世に棲み、生きていく上では、時に自分を偽らざるを得ない事態に直面することもあるかもしれません。その時にはどうしたらよいのでしょうか。
 
Sei-Tanの皆さんは経営実務科で徹底した実務能力を身につけます。自分が生きていく生業に直結しますので、これがなければ何事も始まりません。でもその実務能力を真に生かすためには、実務から遠い、一見役に立たないように見えるモノの見方、人間の見方、世界の考え方、つまりいわゆる「教養」という空間が必要になります。
 
稲置記念館に、各種の式典や演劇や音楽会、講演会などに使われる稲置講堂があるのをご存じでしょう。ステージもある立派で大きな空間です。金沢駅前もてなしドームや石川県立音楽堂、はては街の真ん中にある広大な金沢城公園も一見無駄な空間のように見えながら、実は金沢という都市の品格を高めている大きな要因となっていることは皆さんご承知の通りです。一見すると、役に立っていないように見えるあの空間が、実は私たちに大事なものを与え、教えていると思います。「無用の用」といいます。
 
Sei-Tanの皆さんが、そのことに気づいて、自発的・主体的に大学の授業を受けに行っておられることに我が意を得たりと思い、心からの拍手を送ったことでした。まさに大学と同じキャンパスにあり、学問体系も連続しているSei-Tanならではの強みなのです。皆さん、しっかり勉強してらっしゃい。
 
最後に、「学長とのトークタイム2020」ご希望の方、学生支援課に申し出て日程調整をしてもらってください。お待ちしています。