金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

リアル

5月15日

4月20日、新入生歓迎祭に私も新米学長として参加させてもらった。この場では人と人が顔を合わせて集うということの良さに気づき、心地良い時間を過ごした。
最初に体育館に入ったとき、目から入ってくる情報の多さに気づいた。例えば、学生のみんなは入学式のときの緊張のある面持ちとは対照的に、リラックスした様子。職員やお世話をしている上級生たちのなんとかイベントを盛り上げようとする懸命な表情。先生たちの学生たちを見守る穏やかな表情など、ワンシーンを積みかさねている映画ではなく、舞台でのお芝居をみているように一度に色々な視覚情報が一挙に飛び込んできた。
感じたものは視覚の情報の多さだけではない。人と人が紡いでつくる雰囲気のようなもの、その場でしか味わうことができないそのようなものも。ドッチビーの試合では各クラス対抗という形式で行われた。チーム一丸とはよくいったもので、コートの外からみているとどのチームも一つの生物のように結束して動いて相手のチームと相対し、うまくいくと全体がうれしそうで、うまくいかなかったときは全体で残念そう。各人の感情の足し算でなく、一つの全体として醸している、そんなエネルギーを感じた。とても心地よい空間と時間で元気をもらえた。

話は変わるが、金沢に拠点を移して今年で15年目となる。職業柄なのか本を購入し続けているが、今は圧倒的に本の購入はネット通販に頼っている。自分の探している本はほぼ確実に見つかり、時間も短縮されてスマートになったなと思う。
しかし、大げさに聞こえそうだが楽しみも減った。大阪に住まいがあったときは通勤途中度々大きな本屋を訪れていた。自分の専門分野の書籍コーナーにはもちろん立ち寄り、平積みになった売れ筋の本を手に取ってパラパラとみて、知らぬ間に全く今まで知らなかった分野のコーナーに導かれて、長い時間を過ごすということも度々あった。そのおかげで全く無関係だったジャンルを知ることにもあり、今思えば探検のような時間だった。
新型コロナウイルスが蔓延した期間、IT技術の発達や導入のおかげで、オンラインの授業や研究会が運営され乗り切ることができ、今後もそれらのデジタル技術は欠かすことのできないものであることは確かであろう。一方でそれ以前に培った当たり前にできていたこと、人が実際に体験すること、人と人が集いなにかをするということも大切にしたいものだ。案外そんなことは幸せで贅沢な時間の使い方、スタイルなのかもしれない。