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NEWS & TOPICS [ 2022年度 ]

卒業を言祝ぐ「学歌」

2023年03月01日 学長コラム

2023年2月、本学同窓会(上野雅司会長)様から、学歌「白山(しらやま)の虚空を翔ける」のCD(オーケストラ版、合唱付版、楽譜版)をご寄贈いただきました。ホームページ上にも公開されていますので、ぜひご視聴ください。

2022年6月1日」「Seiryo管弦楽団の夢」に書きましたが、学歌の中でリフレインされるのが「経世こそはわれらの思念、済民こそはわれらが願い」です。「経世済民」(けいせいさいみん)、縮めて「経済」になりましたが、もともとは世を経(おさ)め、民を済(すく)う中国の古典に由来します。分かり易く言うと、「世の中で真面目に働いて暮らしを立て、生きていく、さらにそれが自分だけでなく、ほかの人々の幸せや世の中のためになるような人間でありたい」という意味です。経済学部はもとより、金沢星稜大学の全学部・学科に共通する建学の理念です。

うれしいことに、本年度の卒業式には、本学の吹奏楽部・合唱部がこの学歌を生で演奏してくれるとのことです。先日吹奏楽部の練習に顔を出させていただきました。40年にわたって星稜高校・中学校で吹奏楽部を指導してこられた大竹宏先生のタクトのもと、楽譜冒頭の「素朴かつ雄健に」という意味をよく考えて…という一言で、劇的に音が変わっていく様を眼の当たりにして感動しました。皆さんお一人おひとりが卒業の暁にそうなることを期待されている人物像が音楽となって表現されます。初のお披露目となる今年の卒業式の演奏が楽しみです。

ところで、2022年2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻して戦争を始めてからおよそ1年経ちました。残念ながら、いまだ戦火のやむ気配は見えません。ウクライナ国外に避難した難民は800万人、死傷者は双方合わせて32万人に上ると報道されています(2023.2.23 読売新聞オンライン)。
2023年3月6日、トルコ南部・シリア国境付近で起きた巨大地震では、2月末時点で死者が5万人を超え、被害はなお拡大の見込みと報道されています(2023.2.23 TBS NEWS DIG)。

幸い、日本は現在の所平和で、すぐ戦いが起きるとは考えにくいのですが、しかし日本を囲む国際情勢は次第に緊迫の度合いを高めているように見受けられます。また2011年の東日本大震災級程ではないにしても、大規模な自然災害は今や毎年のように発生しています。国際関係ニュースと言えば、フィリピンからの特殊詐欺犯事件、WBC(World Baseball Classic)、不登院国会議員やらの問題が日本国内でトップニュースとなるのはある意味仕方がないことではありましょうが、しかしそれらに泥むことなく、自らの大学卒業や就職も含めドメスティックで内向きの視野だけではなく、地球儀を俯瞰する視野から世界と日本を眺める知性や感性を持つことは大学で学んだ者の責務であり証ではないかと私は考えます。

世界では各地の戦争や災害の中で対立・分断が生じて貧困化が進み、さらにそれがさらなる紛争や対立を激化させている深刻な状況があります。ウクライナ、ロシア、トルコ、シリア、ミャンマーなど世界の人々の「経世済民」にさらなる強い関心と想いを寄せなければなりません。「経世こそはわれらが思念、済民こそはわれらが願い」。これは本学が世界に向けて発信すべき普遍的な理念です。その実現に向けた卒業生並びに在校生の皆さんのいっそうの尽力と奮闘を呼びかけたいと思います。

筆者撮影 雪解け間近の公園


学歌「白山(しらやま)の虚空を翔ける」
大竹宏先生については「第90回選抜高校野球:青春のタクト終演 星稜・大竹さん、響き40年」
毎日新聞 2018/4/2大阪朝刊 https://mainichi.jp/articles/20180402/ddn/041/050/007000c