金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

「新年 寅の決意」

1月15日

明けましておめでとうございます。2022年の元旦は、一面の雪景色で始まりました。

今年の干支(えと)は寅。私は6度目の年男です。年男・年女は、12・24・36…と12歳ずつ、それまでの自らの過し方を振り返り、新たな展望を含めた自分の立ち位置を確認する上で、結構便利な歴史的自己認識のためのツールだと思います。

振り返ると、私の12歳は、将来の夢とそれに比例する不安の大きさとに翻弄された時代。24歳は、微かな灯りを頼りに、暗く険しい坂道を喘ぎながら上っていた孤独な時代。36歳は、家庭を持ち、家族と共に生きていくことの歓びや幸福という明るさを知った時代。48歳は、学問の面白さや教育・研究という仕事に夢中になった無我夢中の時代。60歳は、職業としての学問と自分の一生に、一定のまとまりと意味を付与したいと考えた収穫期時代だったと総括できましょうか。
振り返ると、雪の上に、道草や後退、たくさんの失敗も交え、獲物を求めてあちらこちらと彷徨(さまよ)い歩いてきた虎の足跡が見えるようです。

筆者撮影、2022年元旦の金沢城

さて72歳。これまで、それなりに仕事はしてきたつもりですが、それは基本的に自分のため。これからは、世の中にささやかな恩返し、元気なうちに何かお役に立てるのであればお手伝いしたいというスタンスです。このように言いますと、多少は老成し、世の中を達観しつつ冷静に見抜く目が備わったかのようですが、実際はそうではありません。まだまだ自分をコントロールできず、さまざまに腹を立てることがしばしばです。
「自分は自分、人は人。」そう達観できれば良いのでしょうが、実はこの齢になっても自分というのが分かったようで、相も変わらず分からないのです。ましてや他人のことなぞ分かりはしないのです。
残された時間、自分とは何かを静かに考える講義を設け、皆さんと共に一緒に考えてみたいと計画中です。

寅なのに馬齢を重ねる内に、既に生きるべき時を生き、命も金も名誉にもこだわる必要性がなくなった老虎の現在。残された役割は、普段は老猫のように陽だまりで居眠りを貪りながら、いざ必要な時には決然と野生の虎に戻って、世の不正や不実に対して憤り、噛み付くことも辞さない最後の覚悟と心身の備えでしょうか。
私なりの「新年 寅の決意」です。