金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

「札勘」

7月15日

Sei-Tan経営実務科の皆さん、2年生は就職活動真っ盛り。焦らずに着実にまいりましょう。
 
皆さんの中には、銀行・証券会社などの金融機関、企業の経理、レジ担当などの業務に就かれる方もおられると思います。お札を数える札束勘定、略して「札勘(さつかん)」というのだそうですが、「縦読み」「横読み」と2通りあって、今も新入社員研修の最初はこれなのだとか。半日ほどやり方を教わった後は、熟練するまで、毎日ひたすら自己研鑽。扇形に開いてあっという間に数え、最後に指でパチンと弾く姿はプロの技ですね。正確かつ美しい。皆さんにも期待されています。
 
最近、ATMはもとより、銀行窓口、最近ではスーパーでも自動支払機が多くなり、かつキャッシュレス化が進んでいるとのこと。それでもスーパーなどの店頭レジでは、まだまだ「札勘」を見かけます。私はあれが大好きなのです。先日、日本のスーパーマーケットに連れて行ったドイツの友人、レジ係が裏側からも繰り返しお札を数えている様子を見て、何をしているのかと興味津々。「あれはね、呪文を唱えて枚数を数えると、お札が増える魔法なの。だから繰り返し数える!知らなかった?ドイツではやらないの?」
 
昔、ドイツの市場で買い物をして、驚いたことがあります。お釣りの受け渡しにすごい手間と時間がかかるのです。例えば2,852円の買い物をして、1万円札を出したとします。日本流にいうならば、先ず8円と40円を渡され、次に100円、最後に千円のお札7枚が出てくるのです。ドイツ語の数の数え方が、2千円と800円と2円と50円の合計を10千円から引き算をする形になり、頭に十露盤(そろばん)の珠が順に思い浮かぶ、日本人の暗算ができる計数法とは全然違うのだと思い当たりました。ドイツの人たち、複雑でお気の毒。
 

筆者撮影、学内にある札勘機

話を魔法に戻します。私の魔法は未熟なために、増えることもあるのですが、逆に減ることもしばしば。処置に困ります。大学教員ですから、お札を数える機会は皆無なのですが、かつての「大学入試センター試験」監督など、問題用紙とか答案用紙を厳密に数える機会はありました。これがもう拷問のようなものなのです。数えるたびに枚数が増減。カサカサに乾燥して震える指先の触覚と、しょぼつく眼と、頭の中の計数装置がてんでばらばらに暴走。焦れば焦るほど、集中できず、頭の中ではそんな時に限って、全く別なことを考え始めてしまいます。結局一番効率的なのは、私が作業に加わらないことでした。
 
銀行の窓口で、お札(キャッシュ)を数える行員さんの「札勘」手さばきを見ると、感動ものですね。「キャッシュ・クリア」とはそういうものだと思っていたら、広報担当のスタッフから、「学長室の窓から」を更新する時、「キャッシュが残っていたら、クリアを」とのこと。慌てて確認したら、確かに財布に小銭がぱらぱら…。ならば「キャッシュ・アップ」の方法も教えてと懇願して、さらなる顰蹙(ひんしゅく)をかいました。同じキャッシュでも、cashとcache、おまけにクッキーcookieまで出てくると、もう私は惑星外宇宙人です。
 
皆さんの就活、宇宙からも応援しています。