金沢星陵大学女子短期大学部

学長室の窓から

「9月卒業」

9月25日

9月18日、9月学位記授与が行われました。卒業生は2名、うち1名の方はご都合で出席がかないませんでした。会場は会議室、卒業生はおひとりであっても式は式。教職員一同、心を込めてお祝いさせていただこうと思いました。
 
私が申しあげようと思ったお祝いの言葉は次の3つでした。
第1は、卒業というのは英語でcommencement、コメンスメント。出発という意味を持ちます。そうなのです。星短を卒業するということは、これから社会で誠実に生きていくということへの新たな出発なのです。船出というほうがいいかもしれません。港を出て大海原を北極に向かうのか、東へアメリカを目指すのか、西へインド方面に向かうのか、人さまざまです。大事なことは、自分の中に、方位を示す羅針盤ないし北極星を持つことです。星短では「誠実にして社会に役立つ」という言い方で、「誠実」をその星に掲げています。しかし世に住む上では、その星一直線に生きていくのはなかなか困難です。心ならずも「誠実」に対して目をつむり、進路を転じなくてはならないこともあるかもしれません。その時は悩みますね。それに対して、私はあえて申し上げます。「海に嵐があるように、目の前に危険が待ち受けている。その時には先ず避けなさい。逃げなさい!」。命あって、心の中に「誠実」という北極星があれば、また本来の進路に戻れるのですから。
 
第2に、9月卒業ということで、同期に入学した友人たちより、少し時間がかかったかもしれないということです。いろいろな事情があったと思います。悔しい思い、せつない思いもなさったかもしれません。でもそれはあなたの人生に優しさと深みを与えてくれます。生き急ぐ必要はありません。眼は見る、耳は聴くという固有の目的ないし役割があります。古代ギリシャではそのことをアレテーと呼んでいました。では人間のアレテーは何か、それは「幸福になること」だと彼らは考えたのです。私もそう思います。ゆったりと幸福になってください。あなたの人生なのですから。
 
第3に、星短は、あなたの母校だということです。あなたが何をしても、将来どうなっていようとも、いつでも帰ってくることのできる母校なのです。折に触れて帰っていらっしゃい。いつでも歓迎いたします。
 
これからの大いなる航海を寿ぎ、良き船出となりますよう祈ります。
本日は卒業おめでとうございます。