金沢星陵大学女子短期大学部

NEWSSei-Tan News!

Sei-Tan News!

ストーリーマンガを文学作品として扱う出張講義を星稜高校で開催

2021.11.26

11月6日(土)

星稜高等学校の土曜講座GSP(GROW!SEIRYO PROGRAMS)高大連携プログラムにおいて、山田範子准教授が出張授業をしました。
授業では、赤坂アカ氏のマンガ「かぐや様は告らせたい」第10巻(集英社、2018)収録の一話を扱いました。文学理論における「空所」概念に注目し、絵と擬音のみ描かれた4コマがなぜストーリーに必要か考え、読みを交流しました。

高校生のコメント

・ストーリー漫画を国語教育に用いようという考えが面白いと思った。マンガ作品の空所が作品に与える意味を考えるのが今までしたことのないことで新鮮味を覚え、面白かった。(N・K)

・漫画を読む際にコマの意味、作者の意図を考えて読むのが面白かったので今度から実践していきたいと思った。(M・Y)

・漫画にある空所の部分を解釈してみて、最初は難しそうだと思っていたけれど、実際にやってみてとても面白かったし楽しかった。また、いろんな人の意見も聞けてよかった。(H・M)

・作者は様々なこと考えてその一コマに意味を持たせていることを感じとることができた。他の人の意見を聞いて自分が思いつかなかった意見がたくさんあり、読み手によってほんの少しのコマでも感じ方が変わってくるマンガの文学的な奥深さを知った。(I・A)

・一つの場面でも人によってたくさんの解釈があって違う考えがわかったのでよかった。普段あまり意識しないところにフォーカスを当てて漫画を読んだのが新鮮で面白かった。(H・D)

・ストーリー漫画を「文学的に読む」とは、読者に漫画の解釈を委ねるということだとわかった。実際に解釈を考えてみると、難しく、とても良い経験だった。(N・K)

山田範子准教授からのコメント

私はストーリーマンガを国語科教育に活用する研究を行っています。学習者から多様な解釈が出て、読みの磨き合いが達成できるストーリーマンガ教材を開発し、短大部の授業ではさまざまなマンガ作品を扱っています。
今回の出張講義では、町田守弘編著『サブカル国語教育学』(三省堂、2021)に私が執筆した内容を実践しました。この本は、国語科教育に携わる研究者や教員が、マンガ・アニメ・ドラマ・映画・お笑いなどサブカルチャーと呼ばれるものを教材化したユニークな授業提案が掲載されています。ただし、ユニークなだけでなく、サブカルチャー教材を通して、どのような国語科の学力が育成されるか明確になっている点が画期的であると思います。
私は、ストーリーマンガの表現の工夫を読み解くことで、学習者の皆さんの「絵やコマから表現の工夫を解釈する力」を育成することを目標とした教材開発をしました。中学生から大学生の学習者を想定した提案でしたので、今回、星稜高等学校の生徒の皆さんと一緒にこの授業を楽しむことができて、高等学校国語科の授業として活用できることが、ある程度検証されたように思います。
これからも多様な解釈が可能になる「問い」が設定できるストーリーマンガ教材を開発することによって、学習者の皆さんが解釈することを楽しみ、「クラス全体の中で発言したい」「他の人の解釈も聞いてみたい」と思える授業づくりを目指していきたいと思います。
星稜高等学校の皆さんが、今後さまざまな場面で、他者の考えやその考えに至った思考の道筋を理解しようと努力し、もう一度自分の考えに落とし込む力を身につけ、新たな学びを構築していってくださることを期待しています。