金沢星陵大学女子短期大学部

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星稜高校で出張授業「ストーリーマンガを文学的に読んでみよう」

2022.06.27

6月18日(土)

星稜高等学校の土曜講座「GSP(GROW!SEIRYO PROGRAMS)」高大連携プログラムにおいて、山田範子准教授が出張授業をしました。
つげ義春氏のマンガ『古本と少女』を読み、文学理論における「空所」概念に注目して、解釈を交流しました。

高校生のコメント

・私は普段からマンガの気になった描写から登場人物の心情を解釈しているので、今日は他の人のいろいろな意見を聞くことができて、おもしろかったです。(Y・Aさん)

マンガを教材として扱う、これまでに行ってきた現代文の読解とは似て非なる授業でした。登場人物の心情を言葉から推測するだけでなく、表情・絵の描き方・コマ割りまでも参考にして読み解いていき、とても興味深く充実した時間を過ごせました。(H・Sさん)

・他の人の考えを聞き、自分にはなかった見方で同じストーリーを読むと、自分の考えを客観的に見ることができておもしろかったです。他の人の考えは自分の考えを広げてくれ、小学校や中学校の授業でマンガを扱えば、文だけでは分からないことが分かっておもしろいかもしれません。(T・Kさん)

・マンガは日常的に読みますが、それを文学的にどのような構造でどのような工夫がなされていて、なぜ自分がこんなふうに感じたのか、深く考えてみたことはありませんでした。今日の講座で、マンガにも文字のみで表現された本と変わらないだけの工夫があることを知りました。(H・Hさん)

・今までマンガの一コマ一コマに注目して、このときのこの人はなぜこんな表情をしているのかとか、なぜこのシーンにこの人が出てきたのか、どんな役割があるのかなどを考えたことがなく、今までと違う視点でマンガを読むことで、読むたびに発見があって何度でも読めるなと思いました。(N・Mさん)

・もともと国語があまり好きではなく、その中でも文章中の一文などから、その登場人物の心情やどんな効果があるのか考えるのが苦手でした。しかし、今日の講座でちゃんと思ったことを言葉にできたし、他の人が自分とは違う視点で考えているがおもしろいなと思いました。私みたいな人も多いと思うので、ストーリーマンガの授業が学校の授業にあるようになればいいと思います。(Y・Iさん)

・マンガのワンシーンの意味をここまで深く掘りさげたのは初めてでしたが、文章のみで読み解いていく現代文の授業よりも、人物の姿や動きが絵として表現されているので、考察する材用が多くなり、より深い考察ができると思いました。物語を読み解くことにおいて大切なものは、そこにたどりつくまでの過程であり、その過程を自分の考えの道筋として大切にしていきたいと思いました。(N・Tさん)

山田範子准教授からのコメント

私はマンガを国語科教育に活用する研究を行っています。文学理論の一つであるイーザーの読書行為論における「空所」概念に由来する「問い」を設定することで、学習者の皆さんが解釈することを楽しみ、「クラス全体の中で発言したい」「他の人の解釈も聞いてみたい」と思える授業づくりを目指しています。
今回の出張授業では、つげ義春氏の「古本と少女」を読みました。つげ義春氏は、マンガ界から初めて、日本芸術院の会員に選ばれました。2022年2月22日の朝日新聞デジタルによると、文化庁が発表した推薦資料には「人間存在の不条理や世界からの疎外を垣間見せる『文学的な』表現によって、自己表現としてマンガを捉える青年たちに絶大な影響を与えた」「まさに『芸術』としてのマンガ表現において日本を代表する作家」などと記されていました。
このように、文学的表現に定評のあるつげ義春氏のマンガをテキストにしましたが、受講してくださった星稜高校の生徒の皆さんも非常に文学的な解釈を発表してくれました。受講生の感想を読んで、それぞれマンガを読むことの魅力や、他者と解釈を交流することによって得られる学びに気付いてくれたように思い、うれしかったです。
これからの高校生活のさまざまな場面で、自分なりの考えを構築すること、その考えを他者と交流し考えを磨き合うことを意識して、より良い未来を切り拓いていってほしいと思いました。