国際交流
【留学】フィンランドへの留学報告~海外の特別支援教育を学ぶ~
2023.01.05
世界の教育をリードするフィンランドに留学した人間科学部スポーツ学科 4年次 K・Mさん(石川県 金沢錦丘高等学校出身)に、日本とは異なる教育支援についての学びを話していただきました。
延期になって直面した「留学か、卒業か」の選択。人生で一番迷って決断しました
今回の留学は、文部科学省が取り組む留学促進企画である「トビタテ!留学JAPAN」の制度を利用して実現したものです。この選考に合格したのが2020年の1月。その年の4月に留学予定でしたが、新型コロナの影響で2年半渡航できず。ようやく渡航が再開された時には、大学卒業の時期も迫ってきており、“留学か卒業か”の選択に直面しました。最終的には「留学して学びたい」という気持ちが勝り、卒業を1年延長することを決断。今年9月から約2か月半の間、フィンランドに留学しました。
言葉の壁を乗り越えた時の喜び、そしてその土地ならではの教育の仕組みを知る時間に
今回の留学で取り組んだのは、小学校におけるインターンシップです。インターン先は、フィンランド北西部ナーンタリ市のクパリヴォリ小学校。主に特別支援学級の授業を見学し、英語や算数の授業ではアシスタントも担当しました。英語が話せる児童を任されることが多かったのですが、そうではない児童を相手にしたときは、その子たちがわからない問題を教えるのに苦労しました。フィンランド語で説明できればわかってもらえるのに、私は英語でしか説明できないことがもどかしくて悔しかったです。時間を見つけてはフィンランド語を覚え、単語と数字で「4+2は何になる?」など、自分が知っている限りの言葉を使って教えていくと、彼女たちも理解でき答えを導き出せるようになった時は本当に嬉しくて。日々の積み重ねと意識を授業に繋げられたことがとても思い出に残っています。
留学期間中、通常学級の授業や、幼稚園や中学校の特別支援学級の視察もでき、フィンランドの教育を幅広く学ぶことができて、留学の意義が何倍にも増しました。中でも印象的だったのは、移民の子どもたち向け、不登校の子どもたち向けなど、障がいの無い子どもにもそれぞれ支援を行う体制が取られており、“障がい”や“特別支援”など、一括りにしない教育の仕組みがあるということを知ることができた点です。
日本にいてはわからなかったこと、知らなかったこととの出会いの連続
休日はフィンランド国内の他に、エストニア、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、チェコなど近隣の国に一人旅に行きました。交通手段もホテルも自分で手配し、現地のやり取りももちろん一人で行いました。旅行していて気がついたのは、各地にウクライナの国旗が掲げてあったことです。陸続きの欧州では、戦争が自分事として捉えられており、日本では感じられない感覚を味わいました。また、街の清潔感、ホテルでのサービスなどを比較すると、「やっぱり日本はすごい国なんだな」と感じることも多々ありました。
もっと学んで経験を積み、今度は自分が教育者として世界に還元していきたいです
今回の留学を通じて、特別支援教育に対する考えが変わったことが一番大きな収穫だったと感じています。留学前は、フィンランドで取り入れられているような、「障がいの有無にかかわらず共に学ぶ“インクルーシブ教育”が一番良い」と思っていました。しかし、現地の特別支援学級の児童と日々過ごす中で、一人ひとりに時間をかけて対応できること、児童に適切な支援ができることが特別支援学級の良さだと実感しました。その気づきをお世話になった現地の先生に話すと、「フィンランドは基本的にインクルーシブ教育を取り入れていて、ナーンタリ市の数ある小学校の中でも特別支援学級があるのはここクパリヴォリ小学校だけ。実はこの学級にいる児童の多くは、授業についていけないなどの理由で他の小学校から移ってきたの。もしあなたが他の小学校でインターンをしていたら、きっと“インクルーシブ教育が一番良い”の意見のままだったはずよ」と言われ、この小学校でインターンができたお陰で、「インクルーシブ教育」と「特別支援学級」の両方の良さを学ぶことができたのは本当によかったと心の底から思いました。