学長コラム

私たちの目的とかたち

2022.07.01

筆者撮影 津幡船橋にて 蓮の花

2022年6月。『日経キャリアマガジン』「価値ある大学2022-2023 就職力ランキング」小規模大学部門で、金沢星稜大学が全国1位に選出されました。(http://www.seiryo-u.ac.jp/u/new/2022/0602_2.html。)

「就職力」の中身は、「行動力」「対人力」「知力・学力」「創造性」の4項目。「行動力」というのは①熱意がある、②主体性がある、③チャレンジ精神がある。「対人力」というのは、①コミュニケーション力がある、②ストレス耐性がある、③適応力。「知力・学力」というのは、①論理的思考ができる、②高い教養を身につけている、③理解力が優れている。「独創性」は、①創造力がある、②個性がある、③着眼点がよい、というものです。

その背景には、金沢星稜大学の進路支援、就職に有利な資格取得の為の総合的なサポート、CDPなどのきめ細かい就職支援、ゼミの指導体制が整っていることなどを挙げることができるでしょう。しかしながら、どんなにサポート体制が充実していても、その根底に学生の皆さん一人ひとりの明確な目的意識がないことには始まりません。

およそ世の中のモノには全てかたちがあります。例えば机一つとっても、講義室用、事務室用、会議室用など様々です。つまり、何に使うのかという目的が先にあって、それによってかたちが決まるのです。自動車もそうです。販売店に行って、「車をください」という人はおそらくいないでしょう。自動車というのは、用途(目的)によって、バスやトラック、クレーン車からスポーツカー、乗用車に至るまで様々な姿(かたち)があるからです。

私は大学もそうだと考えています。ノーベル賞をもらえるような研究者を育てる大学もあれば、地道にまじめに働いて社会に役立つ人間を育てることを目指す大学もあります。高校訪問やオープンキャンパス時には、私も金沢星稜大学の魅力の一つとして就職力の高さを強くアピールしています。でも、皆さん、私はあえて申し上げたいと思います。資格や就職は皆さんが日々それに向かって努力すべき達成目標の一つであり、また結果としての努力の証です。しかし大学教育のゴールではありません。

金沢星稜大学の教育理念は、「誠実にして社会に役立つ人間の育成」と掲げられています。地域で地道でまじめに働き、社会に貢献する人間たることに喜びと誇りを持ちながら、生きていく人間であることを目指します。そのために必要な「人間力」が「行動力」「対人力」「知力・学力」「創造性」です。今回の「就職力ランキング」は、学園創立90周年を迎える2022年、本学の教育理念とその方法論が社会から支持され、評価されている証として、受け止めたいと思います。

さて、その上で学生の皆さんに申し上げたいと思います。
モノには全てかたちがあって、それには目的が先行するのだと申し上げました。実は一つだけ例外があります。それは人間です。どんな夢を目的とし、それに向かって生きようとするのか、どんな生き方をかたちにするのか、最終的にそれを決めるのは、ほかの誰でもありません。あなた方一人ひとりの意思と決断なのです。
引用・参考 『日経キャリアマガジン』、日経HR、2022.5.31発売