トピックス

【金沢星稜大学市民講座】(第100回)『通訳ってどんな仕事?—「むかし」と「今」そして「未来」』を開催しました

2024.02.08

12/09(土)

今回は、横野成美 女子短期大学部教授が標題のテーマで講義を行いました。

通訳の仕事は、コミュニケーションを仲介し、意味を伝えるということです。また、通訳は、一語一語対応するのではなく、その言葉の意味を咀嚼して時には言外の意味までも伝える必要があります。 良い通訳は女性に例えられるとの話があり新鮮でした。ロシア語通訳者の米原万里氏によると訳文が整っていれば美女、そうでなければ醜女、正確に伝えていれば貞淑、そうでなければ不実で、貞淑な美女・貞淑な醜女・不実な美女・不実な醜女の4つのパターンに分類されます。いつも貞淑な美女であることが理想ですが、時と場合によって、例えば、パーティの時の通訳はその場の雰囲気に合わせて時には貞淑さよりも美しく整った通訳が求められるのに対して、法廷での通訳はたとえ醜女であっても一言一句貞淑でなくてはなりません。このように、状況により求められるものが異なることが面白いと思いました。

通訳の現状としては、ある調査によると50代以上が67%で女性が91%、経済的に自立できていない場合が23%との話があり、男性に比べて女性が圧倒的に多く、稼ぐことが難しい職業であることが示唆されていました。 通訳が直面する課題としてまず、国家資格が全国通訳案内士のみであること。昔は民間の通訳養成機関しかなかったこと。コミュニティ通訳者(在留外国人や在日外国人が行政窓口、病院、警察、学校などで必要な手続きやサービスが受けられるための言語サポート通訳)が不足し、法廷通訳に携わる方が10年で500人も減っていること(報酬の問題あり)。都会に集中して地方の需要が少ないこと。今後AIの発達により失職する懸念があること。このように多くの課題があることを今回の講座で初めて知りました。 最後に通訳に未来はあるかという話で、AI翻訳が1950年代に初めて登場してから、1980年代に統計的機械翻訳、2010年代にニューラル機械翻訳が次々と登場して、さらに2017年にグーグルが発表したトランスフォーマー(Transformer)」が、自然言語処理能力を飛躍的に高めることに成功したことが説明されました。 また、音声認識技術の向上により、自動翻訳から自動通訳へという流れになっており、音声翻訳アプリなどが出てきています。 上記により、通訳の仕事はどうなるのか不安になりますが、AIができないこととして、日本語独特の言い回しや主語・目的語・述語の曖昧さなどに起因する誤訳があり、また、通訳者には、雑学や文化対応等言葉以上のものが求められています。

この講座には、通訳を目指す高校生もおり、皆さま熱心に受講していただきました。
ご参加いただいた皆様ありがとうございました。

横野成美教授の研究紹介

【学内助成(個人研究)】
ESPにCLILのアプローチを取り入れた内容重視型教授法