学長コラム

能登応援メッセージ「金沢マラソンと第50回衆院選を終えて」

2024.11.01

10月27日、穏やかな秋の日曜日、1万5千人の金沢マラソン・ランナーが紅葉の金沢市内を駆け抜けました。その中には500人の能登被災地ランナーの招待枠が設けられたとのことです。出身地名ゼッケンをつけたランナーが見えると、能登の被災地に届けとばかりに「がんばれ!」とひときわ大きな声援が沿道から寄せられます。ランナーの皆さんも笑顔と言葉、全身で感謝を表しながら、ゴールを目指して力走する姿は感動的ですらありました。1月の能登半島地震以来、何かしら被災地を応援したいと思いながらも、何もできぬままに手をこまねいている私もしばし沿道に立ちました。多くの人々にとって、被災地ランナーに声援を送りながら、ささやかながら交流のひと時を実現できた点が、第10回を迎えた今年の「金沢マラソン」の新たな意義と特色だったと思います。

この被災地ランナーの招待参加光景を眼にして、思いついたアイデアがあります。金沢や小松といった加賀地区に、被災者や復興支援関係者が気軽に立ち寄り、買い物や休養にも利用できる「能登センター」(勝手に名付けています)のような施設があったらどんなに良いことでしょう。そこには能登の被災者も、また支援者たちも気軽に立ち寄って、様々な能登復興・復旧支援に関する情報、支援物資やボランティア情報なども、ワン・ストップで入手する窓口ともなります。遭難・復旧に喘ぐ「能登丸」のため、僚船「加賀丸」「金沢丸」ができそうなこともまだまだありそうです。今回で10回目を迎えた「金沢マラソン」が提起してくれた新たな交流の場の可能性です。

10月27日は、第50回衆院選の投票日でもありました。私は普段、どちらかと言えば政治には無関心、ないし忌避層なのですが、今回は「能登丸遭難」をうけて、復旧・復興の舵取りを担う国会議員の選挙ということで、いつにも増してその動向に注目しました。

全国的には与党自民党が過半数割れの大敗。「裏金」事件に対する自民党の対応が不十分であると有権者に判断されたことが大きかったとされます。しかし石川県内、とりわけ被災地能登の石川3区では、裏金問題以上に、能登半島地震と豪雨災害で被災し、今なお喘ぎながら暮らし、遅々として進まぬインフラの復旧や将来への不安の中で、政権への不満やいら立ちが投票行動に現れたと見ることができるように思います(北陸中日新聞、2024.10.28)。

3区では前職の自民党議員を破って、15年ぶりに立憲民主党議員が当選しました。前職の自民党議員も比例で復活当選しましたから、3区としては前回同様2名の議員を国会へ送り出すことができました。また輪島市や珠洲市などの被災地では投票率が前回比10%程度下がったとも報じられています。災害で投票をあきらめた可能性も指摘され、「被災地の低投票率 選挙権確保へ検証必要」との北国新聞社説(北國新聞、2024.10.29)は首肯できるものです。

現政権が不安定となり、短命であるとか、あらたな連立に向かうなどの推測も取り沙汰されていますが、何より大事なことは、それらの政争に能登半島の復興・復旧を巻き込んではならないということです。3区はもとより、石川県内1~3区から立候補した3名の当選者と2名の比例当選者、計5名の国会議員は党派を超えて、力を合わせてこのことに取り組んでくださいますように。このことを一有権者として強く望みたいと思います。能登半島地震の復旧・復興(創造的復興)は日本の近未来の先取りにほかなりません。

金沢星稜大学では、中期計画に「能登半島の創造的復興とともに歩む」と明記して、今後も引き続き「能登半島の創造的復興」に努力してまいります。皆様のご賛同とご支援をお願いします。

筆者撮影 第10回金沢マラソン先導白バイ

参考文献
北陸中日新聞、2024.10.28、19面「解説」(田嶋 豊)
北國新聞、2024.10.29、2面「社説」