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【田中富+前田ゼミナール】明治〜昭和初期の英語教科書・古書を調査

2025.12.01

人文学部 田中富ゼミナール、前田ゼミナールでは、英語教育史への理解を深めることを目的として、明治・大正・昭和初期に日本の教育機関で使用されていた英語教科書や古書の調査・閲覧を行いました。

今回の活動では、まず県内にこれらの歴史的資料の所在を確認するため市内図書館や資料館へ問い合わせを行い、その結果、石川県文教会館に歴史的価値の高い原本が所蔵されていることがわかりました。これらの資料は現存数が極めて少なく、簡単には入手できない一次資料ですが、当館の厚意あるご協力により、厳重に保管されている原本を見る機会を得ることができました。

100年前の高等女学校教科書

閲覧当日には、明治期の英和辞書、日本の英語教育草創期に使用された初期教科書、大正期の女学校で女子教育のために編纂された英語教科書、戦時中に検閲で墨塗りが施された教材、そして戦後英語教育を代表する『Jack and Betty』シリーズなど、近代から戦後に至る教材の変遷を象徴する資料を見ることができました。いずれも貴重な原本であるため、直接触れることはできず、目視により資料の内容を確認しました。用意いただいた複写から本文の構成、例文、語彙選定、挿絵、訳注の扱いなど詳細を把握し、当時の英語教育がどのように展開されていたかを具体的に読み取ることができました。明治から昭和初期の教科書には訳読中心の学習スタイルが示され、戦時中の墨塗り教科書からは政治的状況の影響が、戦後の『Jack and Betty』シリーズには民主主義的価値観や米国文化の導入が読み取れるなど、資料を通して社会情勢と英語教育の密接なつながりを再確認することができました。また、80年前の教科書には、当時の学生による「木曜日テスト」とのメモ書きが残されているものもあり、教材が実際の学習の場で使われていた生きた痕跡として、その時代の学生の姿が一瞬よみがえるような感慨を抱きました。
本活動を通じ、歴史資料から英語教育の変遷を具体的に読み解く貴重な経験となり、ゼミにおける学修の幅が大きく広がりました。
(文:担当教員 田中 富士美)

1912年教科書

学生のコメント

人文学部国際文化学科 3年次 K・Hさん(石川県 金沢龍谷高等学校出身)
明治から昭和の英語の教科書を見てみると、黒塗りや独特の例文からその時代の空気が伝わってきました。さらに、書き込みが残っていることで当時の人が実際に使っていた様子がリアルに感じられました。
現代の英語の教科書と比べると内容も雰囲気もずいぶんと異なっていて、時代とともに学び方が変わってきたことを実感ました。

保存中最古教科書明治時代

人文学部国際文化学科 3年次 T・Sさん(石川県 金沢桜丘高等学校出身)
教科書に残されていた書き込みから、当時の学生が学んでいた様子が伝わってきて印象的でした。文章の内容にもその時代の背景が反映されており、時代の流れを感じました。とても貴重な経験でした。

明治初期辞書

人文学部国際文化学科 3年次 W・Sさん(石川県 金沢西高等学校出身)
当時の英語の教科書には、現代の教科書とは異なる特徴が随所に見られました。明治や大正時代にはイギリス英語と思われる表現が多く用いられ、太平洋戦争後はアメリカ英語が中心的に扱われているように見えました。
また、教科書の内容や例文には、当時の日本社会の状況が反映されていたことがうかがえました。